2012年11月21日水曜日

先端巨大症:新しい薬剤

今日は山田正三先生のご講演についてです。今回は、私の取ったノートを掲載させていただきます。

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先端巨大症とは?

GH(成長ホルモン)を過剰に分泌する下垂体腫瘍によって起こる進行性の慢性疾患。

(IGF-1は肝臓で作られるホルモン。GHにより肝臓でIGF1が作られ、体の組織に働きかける。)

骨端線があるうち(小児期)、つまり骨がまだ伸びる状態の時に発症したものは巨人症となり、背が伸びる。骨がもうこれ以上伸びない状態になってから(成人期に)発症したものは先端巨大症となり、末端が肥大する。

発生率は100万人につき3~4人で、あまり多い病気ではない。診断される年齢は中高年が多く、男女比はあまりない。

先端巨大症になると、特徴的な外見になる。術後、骨は変わらないが、軟部組織はすっきりとする。

発症から診断までに約10年はかかっている。外来で、患者さんの手が大きいことを指摘しても、「もともと大きい」と言われることがある。実際に、徐々に変化していくため、本人もなかなか気づかない


全身合併症

主なものには、
  • 心臓血管系(高血圧、心疾患)
  • (睡眠時無呼吸症候群)
  • 代謝(糖尿病、高脂血症)
  • 神経・筋肉(腰痛、手根管症候群、関節痛)
  • 悪性腫瘍
があり、容姿だけの問題ではない。

その他、頭痛などがある。日常生活が送れないぐらい痛む人もいる。

また、腫瘍が大きくなってしまうと、視神経が圧迫されるため、視野が狭まる。さらに、通常の下垂体の機能が悪くなったり、頭痛が起きたりする。これらの症状は、成長ホルモンが高いからではなく、腫瘍自体が周辺組織を圧迫することによって起きるものである。

したがって、成長ホルモンやIGF-1の値の高さと腫瘍の大きさによって症状が決まってくる。

先端巨大症は放っておくと、合併症のため、通常よりも10年ほど寿命が縮まる。したがって、困った症状が無かったとしても、先端巨大症は治療が必要な病気である。 

治療は大きく分けて、
  • 外科的治療(手術)
  • 薬物治療(お薬)
  • 放射線治療
の3つがある。

今のところ、先端巨大症に関しては、治療の第一選択は手術である。しかし、高齢で手術が受けられない、手術をどうしても受けたくない、手術しても治りそうにない場合などは薬物治療を第一選択とすることもある。

もっと良いお薬が出れば、将来的には薬物治療が第一選択となるかもしれない。しかし、今のところ、お薬に関しては「単に飲むだけ」という簡単なものではなく、1か月に1度注射をしたり、毎日自分で注射をしたりするなど、治療を続けていくうえでの患者さんの負担が多いのが問題である。

なお、手術だけで完全に治癒しないこともある。しかし、重要なのは、「治る・治らない」の問題ではなく、治らないにしても、なるべく治癒の方向に近づけていくことである。そうすることで、後に使うお薬の効きが良くなるからである。


では、そのお薬とはどんなものがあるのか?


①ドパミン作動薬(カバサール、パーロデル、テルロン)

成長ホルモンを出している腫瘍の細胞に直接働く。ドパミンの受容体が成長ホルモンを出す腫瘍細胞にある場合に、このお薬が効く。

利点は経口薬であることと、薬価が安いこと。プロラクチンを同時に産生する腫瘍で有効であるが、一方、有効症例が少ない510%)。また、GH,IGF-1が著明に高いものでは効果が得られにくい。


②ソマトスタチン誘導体(オクトレオチド、オクトレオチドLAR

ソマトスタチンは成長ホルモンの分泌を抑制するホルモン。ソマトスタチン誘導体とは、生体内でのソマトスタチンよりも長く効くように作られたお薬。この種類のお薬は先端巨大症の中心的なお薬

利点は即効性、症状の改善、腫瘍に直接働く、といったこと。また、60%の症例でGHIGF-1の正常化が得られるので、有効率が高い。腫瘍の縮小も6570%で見られる。一方、一過性の胃腸症状や、まれに胆石が生じること、高価であること、投与方法が煩雑であることが欠点である。


③GHレセプター拮抗薬(ペグビゾマント)

成長ホルモンの作用をブロックするお薬。成長ホルモンは高いままだが、IGF-1は正常化される。

即効性、有効性が高率であることが利点。一方、毎日自分で注射しなくてはならないことと、成長ホルモンはむしろ増加すること、腫瘍の抑制効果も無いことが欠点。


薬物治療では、これらの3種類のお薬を上手に使っていくことが重要。

1つのお薬を単独で使って効く場合はそれで良いわけだが、そうでない場合は、例えば、サンドスタチンLARとペグビゾマントの併用療法といったことも行われている。これは、2つの薬の「いいとこ取り」といった考えに基づいた治療法である。


ここまでが、現在日本でできる薬物治療について。

ここからは新しいお薬の話…。



(来月12月に認可がおり、1月ぐらいから使えるようになる)

ソマトスタチン誘導体であり、効果に関してはオクトレオチドとあまり変わらない。利点は、煩雑な操作が不要である、つまり注射が簡単になるため、準備にかかる時間が大幅に削減される。また皮下注射であることも利点となりうる(日本ではまだ自己注射はできないが、将来的には自己注射ができるようになるかもしれない)。欠点は、薬価が高いということ。



そろそろ治験が始まる。これも、ソマトスタチン誘導体。ソマトスタチン受容体には12345の5つあり、今までのお薬は25にくっつきやすかったが、パシレオチドは1235といった広範囲な受容体にくっつくことができる

ちなみに、クッシング病ではソマトスタチン受容体の5が重要になってくるため、クッシング病への適応も同時に治験されている。



イスラエルのベンチャーがソマトスタチン誘導体の経口薬を開発し、その有効性を示す論文が少しずつ出てきた。特別な形にすることで、腸から吸収できるようにしたお薬。


以上、お薬について。
 

なお、放射線治療についてだが、今のところは第三の選択肢とされている。(手術をやって、お薬をやってもコントロールがうまくいかない、という場合)

放射線療法はIGF-1が下がるまでに年単位で時間がかかるため、即効性は無い。また、IGF-1が非常に高い腫瘍には使うべき手段ではない。むしろ、腫瘍の成長を止めたり腫瘍を小さくしたりするのと同時に、成長ホルモンも下げる、といった考えで行うべき。したがって、「放射線だけで下げる」という考え方はおすすめしない。

また、お薬を使うと放射線が効かない、という考え方もある。十分なエビデンスがあるわけではないが、私は薬をやめてから放射線をかけている。

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途中、「先端巨大症の方は大きくて力持ちだが気は優しい、と言われている。成長ホルモンは気持ちを豊かにするホルモンでもある。」とおっしゃっていて、思わず「そうだと良いんだけどな」なんて思ってしまいました。^^

<過去ログ>

 

3 コメント:

りょ~たん さんのコメント...

これらのお薬が一日でも早く承認されることを願います。

サリー さんのコメント...

SARAさん、こんにちは、はじめまして。
ランレオチドという薬で検索して、こちらにたどり着きました。

小腸カルチノイド患者のサリーと申します。
今は、転移があるため、月に1度サンドスタチンの治療をしています。
カルチノイドは神経内分泌腫瘍という病気の分類になり、
10月に亡くなられた金子哲雄さんが肺カルチノイドだったので、
一気にカルチノイドという名前が多くの人に知られるようになりました。。
内分泌の病気ではあるのですが、悪性腫瘍のため、希少がんというとらえ方ですね。

海外のカルチノイド治療に関して書かれたページで
ランレオチド(ソマチュリン)という薬があることを知り、
日本語で検索してこちらにたどり着きました。

サンドスタチンの経口薬というのも開発されてるんですね。
パシレオチドは、神経内分泌腫瘍(カルチノイドを含む)で
現在治験が行われれてるようです。

それにしても、私もサンドスタチン使用後、倦怠感があり、
20mgを30mgに増量した当初は、睡眠導入剤を使用したみたいな強い眠気に襲われ、
3日間、トイレで起きる以外は寝続けたことあります。
今は、軽い倦怠感ぐらいですけど、同病のサンドスタチン使用の患者さんで
倦怠感出る方はいらっしゃらないようでした。

また、私も2008年まで夫の海外赴任の随伴で海外(インド)に住んでいて
病気が発覚して、手術のため2008年4月に帰国しその後日本に住んでるので、
なんだかSARAさんとは、病気の種類はちょっと違うけど、
とても親近感あります。
長文失礼しました。

Sara さんのコメント...

サリーさん

遅ればせながら、コメントありがとうございました。

サンドスタチンLARの倦怠感に関して、私は現在10㎎ですが、20㎎の頃は倦怠感がとても辛かったのを覚えております。やはり一定の割合で出る副作用ではないのかな、と思っております。(ちなみに、添付文書には、倦怠感は「頻度不明」ですが、疲労感は「1%~5%未満」と表記されておりました。)

サンドスタチンLARも1か月に1度の投与で済む素晴らしいお薬なのですが、やはり「注射は嫌だな」と感じており、経口薬は欲しいと思っております。毎日飲む必要があるお薬のようですが、注射に比べたら楽なものだと私は感じているので、早く使えるようになると良いな、と思っております。

それにしても、海外で病気が発覚、という共通点にビックリしました。現在、私の先端巨大症は落ち着いており、コントロールできている感じなので、サリーさんの病気も落ち着いていると良いな、と願っております。

それでは、2013年も良い1年でありますように。

Sara

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